消化器外科医|塩澤学先生
“根拠”がある医療にチームで取り組む。
その意義と誇りを若い世代にも引き継いでいきたい
自分自身が行っている医療は正しいと言える“根拠”を持つ
私がまだ駆け出しの頃、諸先輩の外科医の手術に一緒に入らせていただくたびに、医師によって手術方法が違っており、どの手術手技が正しくてベストな治療であるのか迷う時期がありました。
『どの治療をすれば患者さんを治すことができるのか』ということについて、先輩外科医と常に意見を戦わせながら手術をしていました。合併症の回避、がんの根治などに関して自分自身が行っている医療に“根拠”が欲しかったですね。
何度も自身が行ってきた手術を顧みることや術後の患者さんと外来で会話していくうちに、自分が行っている手術治療は間違っていないという確信がやっと持てるようになりました。
本邦における大腸がんの全国データと比較しても、少なくとも全国平均よりは良好な結果を出してきていることもわかってきました。現在は、さらに高いクオリティの医療を提供できるように奮闘し続けており、今は後輩たちに、自分たちが行っている手術に対する“根拠”を自身の言葉で言える外科医を育てていくことに注力しています。
チームで同じ意思を共有し、1回の手術に全霊を賭ける
大腸がんは、最初の手術で完全にがんを切除することが大切です。
まさに手術の質で勝負が決まると言っても過言ではありません。妥協は一切許されない。だからこそ『この患者さんに2度目はない』という緊張感をもって手術に臨んでいます。この勝負に勝つためには、手術に参加する外科医が同じ目的、ベクトルを持つことが大切ですからチーム医療は必須です。
メンバーは若手も多いですが、治療に対する彼らの意見を頭ごなしに否定はしません。彼らも患者さんのために熟考して言葉にしているわけですから。また、たとえ結果が伴わない場合も個人の責任にはせずチーム全員で反省し次の治療に必ず生かします。
見た目も大事。でもそれ以上の要は信頼に足るコミュニケーション
ひと昔前は、ワイシャツにネクタイ、白衣、そして革靴というのが医師の典型的なスタイルでしたが時代は変わりました。信頼されるような外見も大切ですが、それ以上に患者さんときちんとコミュニケーションを取り、信頼を得るだけの知識、言葉を持つことのほうがもっと大事。
チームでは皆で同じスクラブを着ています。美しいシルエットで統一されることによる診療科としての洗練性や精神的な団結力が生まれました。スクラブは動きやすさと格好良さが両立されていて、メンバーからも患者さんからも好評ですよ。
私の上司は『自分が大腸がんになったら塩澤に任せる』と言って退きました。私も同じように、自分の命を任せることができる医師を育てたいですね。それが外科医として自分の最大の目標です。