循環器内科医|合屋雅彦先生
医療が発達した今も残る「足りない領域」をなくしたい
救命する父の姿に感銘を受け「自分もこうありたい」と感じた
医者になるきっかけは、父親が具合の悪い方を救命した現場に立ちあったことです。父は耳鼻咽喉科医でしたが、率先して命を救おうとする姿に感銘を受け「自分もこうありたい」と感じました。
家坂義人先生との出会いも大きな影響があります。研修医2年目の頃、茨城県の土浦協同病院で研修していました。現在(取材時は2021年7月)名誉院長になられた家坂先生は日本の不整脈カテーテルアブレーションの草分けの先生です。今でこそカテーテルアブレーションの治療は年間10万人ほどに対して行われますが、当時は保険適用にさえなっていませんでした。家坂先生はそのころから信念をもってカテーテルアブレーションに取り組んでいらっしゃいました。その家坂先生に「お前は、不整脈でいいだろう」と言われたのが不整脈治療を志したきっかけでした。
人との出会い、というものですね。
医療は患者のためにあるもの
僕は、「医療は患者さんのためにやるもの」だと思います。「患者さんの為になるか、ならないか」が「治療するのか、しないのか」の選択基準です。しかし現実は理想だけでは判断が難しいケースもあります。そういった面では、この病院は国立(国立大学法人 東京医科歯科大学)なので、持ち出しの医療ができる環境です。損得ではなく純粋に「患者さんの為になるか、ならないか」で「治療するのか、しないのか(どういった道具・薬剤を用いて治療するか)」を判断できます。僕の思う「患者さんのために必要な治療」が実現できています。
何が患者さんのためか、それぞれの領域によって考え方の違ういろいろな先生がいます。「24時間往診する先生」もいれば、「末期の患者さんの苦しみをとる先生」もいます。治療を受ける患者さんの考え方も様々です。
僕の場合は、患者さんと共に「その方にとって最善の治療」の方向性を組み上げていくことを判断の基準にしています。
『家坂スピリット』で足りない領域をなくしたい
しかし、より良い治療を実現していく中で『足りない領域』というのが今もあるんです。
『足りない領域』というのは技術的な面で治療が難しいということです。
現在では一般的な治療として発展したカテーテルアブレーションも昔は『足りない領域』でした。家坂先生との出会いもあり、僕は90年ごろからアブレーションに取り組んでいましたが、1994年の保険適用を経て現在のように広く使われるようになるまでは、カテーテルアブレーションで簡単に治せる患者も、昔は治せなかったのです。今振り返ると、一つの治療から始まり、発展するまでにかかった20年、30年という期間をずっと携わってこられたのは幸運だったと思っています。
カテーテル治療によるリード抜去術への取り組み
いま僕が取り組んでいるのは『リード抜去術』です。
これは、心臓にペースメーカーが入っている患者さんがリードが壊れる、血管が閉塞するなどの合併症や感染症などを起こしたときに、ペースメーカーのみならずリード線ごと取り除かなくてはならない場合に用いられる方法です。長期間心腔内や血管内に入っているリードは組織と癒着しているので、単純に引っ張るだけでは取ることが出来ません。以前は外科的に開胸しなければならなかったことを、カテーテルを用いて行うというものです。外科的に開胸しないことで患者さんへの負担を大幅に減らすことが出来ます。
しかしその治療を行うための機械の日本への導入はヨーロッパやアメリカと比べて15年くらい遅れていました。その遅れた期間、抜去術が必要な状態になってしまった患者さんは、世界に比べて不利益を被っていたことになります。
東京医科歯科大学に来る前に北九州の小倉記念病院で勤務していたのですが、そこで何人かリード抜去術が必要な患者さんと出会いました。その時に「何とかならないか…」と思い、当時まだ日本に入ってきていない、アメリカで使われていた機械を個人輸入しリード抜去術を開始しました。
これは、日本で初めてのことでした。その後、その機械とは別のものですが、正式に保険で承認された機械が国内でも導入されましたので、今ではそれを使っています。保険診療で認められていないようなものでも『患者さんの為になる』のであれば積極的に取り入れていく家坂先生の背中を研修医時代に見ていたので、僕も『家坂スピリット(患者さんの為になることをする)』を実行しています。
情報はネットと人の繋がり両方から得る
情報収集の手段のひとつはネットです。今は論文や学会の情報は簡単に手に入りますよね。あとは、「人間のネットワーク」です。国内外の不整脈の先生とつながっていれば、いろいろと情報が入ってきます。それと業者さんもチームの一員です。業者の皆さんからも情報をもらえることがあります。
ネットは早く便利な反面、論文や学会の情報は体裁よくされていることがあるので、ある意味加工された情報になってしまいますよね。それに比べ、携わっている人間から直接聞く情報は良いことも悪いことも全部が生の情報になりますから信頼できます。そういったこともあり人との繋がりは大事だと思っています。
若いうちに出来るだけ多くの症例を見てほしい
若い先生にはできるだけ多くの症例を見てほしいです。一人一人の患者さんは違います。特に「稀なケース」にあたった場合、正しい判断ができるかどうかは、それと近い症例を見てるかどうかが重要です。適切な治療を行えるようになるために若い間にたくさん症例を経験してほしいです。
全員にというのは難しいと思いますが、一生のうちに何年かは海外の一流施設に行くことをおすすめします。海外の一流施設はそれぞれの得意な領域に特化しています。特化しているため、留学している間は自分が学びたい領域に集中して取り組んでいられるのです。いろんな意味で日本より進んでいる部分があるのでそれを見てほしいです。
また、「外国に住む」ということ自体がすごくダイナミックな経験になると思います。
海外にいることで今の日本が分かる
言葉も違いますし、文化の違いを見たときに日本の良い点や悪い点が見えてくると思います。僕はドイツのハンブルクに行っていたのですが、ヨーロッパの歴史的な建造物や美術館・博物館もたくさんあるのでそれらも観たりしました。
仲間意識を生むユニフォーム
先ほどお話しした土浦協同病院では揃いのユニフォームがありましたが、前にいた病院では決まったユニフォームがなく自由でした。そこで何か揃いのユニフォームがあったほうが良いのではと提案したのですが、「それなら先生がデザインして」と言われまして、とあるメーカーさんのユニフォームを選び、揃いのワッペンを作ってもらいました。
揃いの白衣に揃いのワッペンを付けるとチーム感が一気に増しますよね。プライドってあるじゃないですか。ユニフォームを着た時に、仲間意識・プライドのようなものを感じました。
制服選びのポイントはズバリ「着やすさ」
まず、第一に何といっても「着やすさ」ですね。僕にとってはスクラブというものは「作業着」だと考えています。ですから、スクラブを選ぶときは特に「肌触り」を気にしています。柔らかい素材のものが好きで、気に入るとそれをずっと着ています。このディッキーズのスクラブは少し生地がかたいので、もう少し柔らかくなるといいですね。何回か洗濯すると柔らかくなるとの事なので、早速洗ってみたいと思います。それと、肌触りも重視しているのですが制服なので「長持ちする」というのも大切ですよね。
休暇中のリフレッシュ方法は?
難しい質問ですね。
一つは好きなお酒です。それと、プランターでミニトマトと茄子をつくっています。
あと熱帯魚も飼っています。水換えが大変ですけれどね。
手術の合間の過ごし方は?
医師同士もそうですが、ナースやMEの皆さんと良いチームを作るように努力しています。不整脈の治療は一人ではできません。機械の操作やデータの読み取りなどチームの連携が必要です。良い人間関係・信頼関係を築き、お互いに信頼しあえるチームづくりが本当に大切なんです。
他の領域以上に不整脈の治療は、上下関係のないフラットなチーム作りが必要だと思います。
合屋先生ご着用のスクラブ
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