小児心臓血管外科医|高橋幸宏先生
“患者さんのために” そのピュアな思いが技術を磨き、そして結果をもたらす原動力となる。
医師の技術の修錬が
さらなる低侵襲の鍵になる
心臓を止めて体外循環を用いて行う手術は、体への負担が非常に大きいため、侵襲をいかに低くするかが鍵となります。小児の場合は当然、及ぶ影響は大人以上に大きくなる。それを最小限に抑えるために、医療機器メーカーと協力して人工心肺装置を開発するなど、僕自身も近年のハード面での進歩に携わってきました。
さらなる低侵襲のために残された策は、外科医が上手くなること。つまり、外科医が腕を磨き、手術時間を短くする他に手だてはないのです。例えば僕の場合、今日は3件の手術を予定しています。
以前は同じ内容の手術でも6、7時間を要し、1日に3件もの手術を行うことはほぼ不可能でした。しかし日々経験を重ね、「体への負担をいかに軽くするか」を考えるうち、徐々に手技が速くなった。手術が早く終われば予後も良好になるし、医師も早く帰れる。皆がハッピーなのです。
若手は積極的に手術に関わり、
技術を磨く糧にしてほしい
ただ、たとえ短時間で手術を終えても、出血量が 多く、医療費も多額に掛かったのでは、トータルで見れば良い手術だとは言えません。我々は過程 にもこだわってきたからこそ、成績もそれに伴っ ています。榊原記念病院は心臓血管外科で番を 張っているんだ。外科医は、それくらいの気概を持っていますよ。 僕は還暦を過ぎていますが、まだ退くわけにはい きません。僕を頼って来られる患者さんもいらっしゃいますから。とはいえ近年は、後継者の育成 にも力を注いでいます。若い医師に門戸を開き、自由に学び、モチベーションが上がるような環境作りに尽力しています。例えば、榊原では年間500例以上の手術を行っており、場数を踏める機会が圧倒的に多い。
これは逆に言えば、100例の環境の1/5の時間で勉強できるということ。手術に積極的に入りながら、患者さんを良くするにはどうすべきかを真摯に考え、腕を上げ、成績を上げてほしいですね。
医師が“格好良く”いることは患者さんの信頼獲得にもつながる。
医師にとって見た目は大事。患者さんからも「格好いい」と思われなくてはいけません。ユニフォームは病院の顔でもあるから、そういう意味でも格好いいものを選びたいですね。スクラブは学生の頃から愛用していて、今もオペがない時でも着ています。これからも、手が動く限り手術は続けます。となると、スクラブは僕の一生のユニフォームですね。
後輩たちには1日も早く、どうすれば手術時間を短くできるのかという“感覚”を覚えてほしい。そのためには、榊原はベストな環境だと自負しています。