乳腺外科医|土井卓子先生
チームだから提供できる医療が、ここにはある
技師がいて看護師がいて、
チームの対話が、私たちの医療をつくる
私たちの医療は技師たちがつくってくれているんです。医師は結論を説明しているだけ。医師ができることは少ないですよ。ここでは乳腺外科医のほか、放射線技師、エコー技師、薬剤師、腫瘍内科医、看護師、そして患者さんを支えるピアサポーターやカウンセラーを加えたチームで乳がん治療にあたっています。
撮影した画像は技師たちと意見を交わして診断する。そのほうが正診率は高まります。患者さんに治療方針を説明するときは、「あなたの治療法の作戦会議をしましょう」と持ちかけます。薬剤師や看護師も加わり、その方の病状に合った診療方針をその場でディスカッションして決めていく。医師が一方的に説明するより、そのほうが患者さんの要望に合った方針がつくれると思いませんか。
患者さんに「納得」してもらうために必要なのは、
きちんと説明すること
乳がん治療は今、過渡期にあります。
全摘しか選択肢がなかった時代から、温存が可能になり、今は再建もできるようになった。いろんな治療法があるけれど、患者さんからしたらどう選んでいいのかわからない。選んでもらうために必要な説明が、圧倒的に足りていない。私は患者さんに納得してもらうために、ものすごく時間をかけます。1度の説明でだめなら2度でも3度でも話し合い、患者さんから「手術を受けたい」と言ってもらわない限り手術はしない。
ときには患者さんにつらいことも伝えなければならないけれど、患者さんにもそのつらさを乗り越える力を持ってもらわなければ、よい医療は提供できない。でも、それを患者さんに伝えるのは、ものすごく難しい。
毎日患者さんと一緒に泣いて笑って。
だからパワーが湧くものを身につけたい
私が医師になった頃は女医が本当に少なかったんです。乳がんの患者さんから下着のことやケアのことを相談されるようになって、今ここにいます。いいことも悪いことも、毎日たくさんあります。患者さんと一緒に笑って、泣いて。病院での時間が濃いから、家に帰ると刺激的な映画はもう見たくない(笑)。
でも、ウエアを着替えた瞬間、気持ちが切り替わる。私は毎日針を刺したり、切開したり汚れることが多いので、ドクターコートを羽織るだけでなく、全身着替えます。スクラブは特に腕を動かすのが楽ですね。ウエアは見た目も、着心地も、ものすごくこだわります。キラキラの靴は10足くらい持っています。 パワーが湧くものを自然と身につけたくなります。