No.10 総集編1
総集編1
今回からは総集編として、色のコミュニケーション効果・色のメンタル効果・色のコンビネーション効果について順次お届け致します。
今回は色のコミュニケーション効果です。
色が人々の社会生活とどのように関連しているかについて考え、色が「記号の役割」を果たすケースについて見てみましょう。
位階色(いかいしょく)
役職別、職務別にウエアの色を分類する効果
院内ではさまざまな職務の人が働いており、患者様あるいは付き添いやお見舞いに訪れるご家族から見れば「誰に何を尋ねたり、頼んだりすれば良いのだろう?」と戸惑うこともしばしば。最近では、そんな患者様の戸惑いや不安を解消するために、職務別あるいは役職別にウエアの色を変える病院が出てきました。このアイディアは、一見新しい考え方に感じられますが、実は日本の歴史にルーツがあります。604年に定められた冠位十二階の制では、朝廷に仕える家臣を12の階級に分け、その階級に応じた冠(かんむり)と衣の色が定められました。位の高い順から「徳」紫、「仁」青、「義」赤、「礼」黄、「智」白、「信」黒となります。これらの色のルーツは中国の五行説。
中国では中央の色を黄と考え、東西南北のそれぞれに守り神(四神)として青龍・白虎・朱雀・玄武を定めていました。五行説の中には紫という色が存在しないにも関わらず最も高貴な色とされた理由は、紫の染色に莫大な労力とコストがかかったためとも言われています。一般に濃い色ほど威厳が増し、信頼感にもつながるため、医療の現場で、看護師よりも医師のほうが深い色を身に着けるというのは、ある意味理にかなっていると言えそうです。
[右:紫根とその染料で染めた布/左:五行説の四神]
識別色
直観的に理解でき、間違いなく処理するための色
世界中どこの都市でも交通網が複雑に発達しているエリアでは、路線ごとに色分けした地図が存在します。私たちは色を頼りに行き先を調べ、乗り換えのポイントを把握します。院内でも、患者様に検査を受けて頂くための動線が壁や床に色線で示されていることがあります。「これから検査のためのレントゲンを撮ってきてください。○○色の線をたどって行けばすぐにレントゲン室が分かりますよ」と言われれば、子どもでもお年寄りでも迷わずに安心して目的地まで辿り着くことができます。
このような色の効果を、専門用語では「色の識別性」と言います。私たち人間は形よりも色のほうを一瞬早く認識する動物であるため、色で指示をされると直観的に理解しやすいのです。色の働きには大きく分けて二つの側面があります。一つは「イメージの演出によって、人の心を動かすチカラ」。もうひとつは「識別性の効果によって、人の行動を促すチカラ」。絶対に間違いがあってはならない大切な書類の管理などにも、文字だけでなく色が併用されているのはそのためです。